2012/06/10 07:11
ボクの車での初デートはこんな具合だった。ボクは16歳で、
運転できる年齢だった。ママもボクが運転できることを喜んでいた。
買い物に行ったりしてもらえるからね。まあ、ボクという配達員が
そばにいるようなものさ。ボクも運転が好きだったから気分はよかったよ。
ボクらは運転できる喜びとか大人になった気分を感じたものさ。
10年くらい前には、みんなそう思っていたんじゃないかな。
とくにアメリカ人にとっては、この自立心はなにより大切だったんだ。
子供から大人に変身する一種の通過儀礼さ。ボクはほんとうに運転が好きだった。
ああちょっと話がそれた・・・
ボクの車での初デートはミッシェルとドライブイン・ムービに行ったんだ。
ママはミッシェルが好きじゃなかった。たぶんミッシェルの大きなおっぱいと
関係があったんだろう。あんなこんなでボクはこの子にますます惹かれて
いったんだけど。
いいデートだったよ、16歳の少年にとっちゃあ。
映画を見て、特大のポップコーンを食べ、けっこう知的な話もしたし。
違反キップは切られなかったし、気まずいことや、失敗もなかった。おまけに、
おやすみのキスもしてもらえた。ちょっと臆病なボクらには大きなボーナスさ。
ボクは有頂天だった。何のトラブルもなかったし、ポップコーンはいっぱい
残ってたしね。だから家に帰ったとき、上機嫌だった。たぶん、フェロモンの
撒き散らし状態だったよ、16歳の少年のデートの後ってそうでしょ。
ママはどうだったの? って訊いた。パパはまだ帰ってなかった。
うまくいったよ、って答えたよ。ママがこれ以上根掘り葉掘り訊かないよう、
簡単に答えたんだ。
ティーンがよくやるやりかただよ。ボクはママは喜んでいるのがわかったよ。
すくなくともボクが喜んでいる以上にね。
ママはそんな感情をじょうずに隠してたけどね。あの晩のことよく憶えてるけど、
ママはプロの女優みたいだった。 まあ、ともかく後になって、パパが帰ってきた。
そして仕事場に忘れてきた書類をママと行って取ってきてくれないか、ってボクに
頼んだんだ。もう一度運転できる!行くとも!パパは書類のある場所を説明した。
ボクはキーをつかんで、車にとんでいき、車に乗り込んでエンジンをかけ、ママの
ために助手席のドアを開けてやった。ママは車に乗りこむ前に立ち止まって言った。
「後ろに何かおいてあるわ・・」
その言い方にはママ特有のトーンがあって、ボクの心臓は止まった。ミッシェルが
イヤリングかバッグをおいて行っちゃったのか?ボクはゆっくりと後ろを振り向いた。
そこには、デートの後、片づけを忘れたポップコーンとふたつのカップがあるだけ
だった。やれやれ、そんなことか。
回転し続けたボクの脳もちょっと落ち着いた。こう考えた「ああ、車ん中きれいに
してなかったね。なんとか事態を好転させろ。金の使い方を知ってるように振舞え」
ボクは肩をすくめて言ったよ。
「たしかに大入りのポップコーンだけど、2日は食べられるからね」
バカみたいなこと言ったけど、
「車を汚いままにしたわね」というほのめかしをそらせたかったんだ。
「そうだ」ボクは思った。
「ボクがどんなにうまく頭を使って切り抜けたかをみんなにいわなくちゃ」
ボクは小さな勝利に酔っていたら、ママはまだ車の外にいたんだ。
「ママ何してるの?行くよ!」
ママらしい長い間があって、からかわれた女性がみせる怒りをみせて言った。
「あそこにも何かあるわよ!」ママは後部座席の床を指さした。ママの手が震えて
いるのがわかった。
それが寒さのせいかどうかわからなかった。でもそうじゃないことが分かったよ。
あれ~、こんどは何だ。たったいまポップコーンの件をうまく片付けたばっかなのに。
こんなママの声のトーンって聞いたことないし、その後も一度もなかったくらいだ。
ぞっとする声だった。ママは怒り狂って、声のピッチも上ずり、南部訛りがでてくる、
ママの場合はもっと早口だけど。「うしろのせきにブラがあるわよ!」
声がうわずって、おまけに早口で聞き取れないから、ママが震える手で指す方を見たんだ。
後ろの座席には何も見えなかった。あっ、でも・・・・、床に落ちている白い大きな
ものは何だ?野球帽ふたつ?違うなあ、つながってるしなあ。あっブラだ!
もうこれで終わりだと思った。
次の数秒間はこんな風だった。
ドキドキ
なぜママのブラが車の中にあるんだ? 目の前にある状況証拠を前に恐ろしい予感に
押しつぶされそうになった。
ドキドキ
車での初デート・・・ミッシェル・・・ママは彼女が嫌い・・・ブラ?
ドキドキ
それからこう思った、これはまずい事態だ。
ドキドキ
ママはさっと坐ると、ブラを掴んでライトにかざして調べ始めた。今度はそれを
くんくん嗅ぎだした。そうしている間ボクの心の中に安堵の波が広がっていった。
だってボクがしたのはおやすみのキス
だけだったんだもの。ほんの一瞬ブラはミッシェルのものだと思った。でも初めての
車のデートで後部座席にブラを置き忘れるようなことがあれば、誰だってよく憶え
てるはずさ。はじめて雪におおわれたグランドチトン山を見たのを憶えてるように。
そんなことが起きていたらボクの心はそれに奪われていただろう。
ドキドキ・・・ママがかん高い声で叫んだ。
「ブラに香水がついているわよ・・おまけにママのじゃない!!」
ドキドキ・・・ママは説明を求めているのだ、それもすぐに。たぶんそれでボクの
声が1オクターブ高くなったんだ。ボクは完全に否定モードに入った。短かく
無益な戦いだった。状況は不利だった。
ふたりとも相手が間違っていると思いながら、書類を取るために、ボクは黙って
ママをパパの仕事場に連れて行った。パパは書類がある場所を正確に説明していた
ので、ボクらは仕事場に向かった。中に入って書類を取ろうとした。でもパパが
指示した場所には書類がなかったんだ。
ママが電話のダイヤルをし始めた。ママの反応がすごいので、ボクもブラがなぜあの
場所にあったのかいろいろ考えてみた。ありそうもないことまでも・・。
ミッシェルのブラでボクが憶えてない?いやそれなら憶えているはずだ。やむに
やまれぬ嘘はこうして始まるんだ。いや、これは本当のことさ。
ひょっとしたら、ミッシェルは余分のブラを持っていてバッグから落としたかも。
いや、バッグはそれには小さすぎる。ボクがあり得ないことを考えている間、
ママはダイヤルするのをやめ、笑い始めた。ママにいったい何が起きたんだ。
ママは言った。「きっとパパがそのブラをそこに置いたんだわ」
家に着いてもボクはまだショックだった。パパは新聞を読んでいた。なんか
わざとらしく顔を隠すようにして新聞を持っているけど、必死に笑いをこらえて
いるのがわかった。
ボクはやっとのことで言った。「ひどいよ」
それからボクも大笑いをした。なぜなら、計画を立てたんだ。
いつか自分の息子にこのいたずらをしてやるつもりなんだ。

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